掲載:2025年12月13日
ブランディングの3類型
多くの人に認知され、記憶に残り、思い出してもらうために必要な要素の提供が基本です。
もくじ
認知・記憶・想起
1. 【認知】ブランド名を見て誰の何かがわかる
2. 【記憶】このブランド名は誰の何かかを他人に説明できる
3. 【記憶】あのブランド名を特定の状況で思い出せる
注意事項
・最も重要なのは「誰か?」の部分
・品質はあまり重視されない
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知的財産法の分野では、多くの人に認知され、記憶に残り、思い出してもらうために必要な要素の提供全般をブランディングの基本活動と捉えています。マーケテイングや広告・セールスアプローチとは異なりますので、その違いを簡単に説明します。その前に、基本となる商標法についてご紹介します。商標法では、誰が、何について、どの名前で事業をしているかを国(特許庁)に登録し、独占的な使用を認め、同一・類似の名称を使用した他人を商標権侵害者とする制度です。商標権の侵害罪は詐欺よりも罪が重く、実行犯に最大10年の拘禁(懲役)刑と1000万円の罰金、それによって利益を得た法人に最大3億円の罰金を貸すこともできるかなりの重罪です。
1. 【認知】ブランド名を見て誰の何かがわかる
知的財産法の分野でのブランディングは、早い話逮捕してもらいやすく、損害賠償を大きくできる事前活動と考えてもらっても大丈夫です。ここで、何をもって商標権の侵害になるのかが大事ですが、簡潔にいうと「パッケージを見てロッテのトッポだと思って買ったらロッテじゃなかった!」こういう時に商標権の侵害罪が問われます。これを出所の混同が起きているといいます。まず、トッポという名称をみて、「ロッテのお菓子だ!」と消費者が期待できることが必要です。
次に、トッポという名称をみて「チョコレート菓子だ!」と消費者が期待できることが必要です。これを、品質保証能力と呼んでいます。商標権侵害罪で逮捕してもらうには「トッポという名称のお菓子を見てロッテのお菓子だと思って買ったらそうじゃなかった」という出所の混同が働き、さらに「トッポといえばロッテのチョコレート菓子だ!」という品質保証能力が高ければ高いほど、罪は重くなり、損害賠償額も高くなります。つまり、トッポといえばロッテ(出所表示能力といいます)、トッポといえばチョコレード菓子(こちらが品質保証能力です)、この2つをまずは有名にする必要があります。
2. 【記憶】このブランド名は誰の何かかを他人に説明できる
商標権の侵害事件では、そのブランド名がどれだけ有名だったかという説明をしなければいけません。トッポだからロッテだと思って買ったらそうじゃなかったというのが商標権の核心部分なので、そもそも「トッポといえばロッテ」という対応関係が消費者に記憶されておらず、「ロッテだと思って買ったのにそうじゃないじゃないか!」と、消費者が「トッポといえばロッテのチョコレート菓子だ!」という対応関係を、他人に説明できるにまで持っていく必要があります。このレベルの消費者が何人いるか、どれくらいの割合で存在するかで、そのブランドの財産的価値がどんどん上がっていきます。
3. あのブランド名を特定の状況で思い出せる
このようにして、トッポといえばロッテのチョコレード菓子であるという連想ができるように知名度を高めた後、次は逆を試みます。今までは侵害対策・財産的価値の向上を試みていましたが、次はもっと具体的に「お客さまに買っていただく」ことを目的にした活動です。それは、「トッポといえばチョコレード菓子だ」から、「チョコレード菓子といえばトッポだ」という連想が効くように、消費者に強い印象づけを行なっていきます。なお、ブランド「トッポ」については、「やっぱこれだね~♪ロッテのトッポ!」というメッセージをメロディに載せ、全てを商標登録し管理しています。一見地味に見えますが、完璧なまでの知財戦略です。
ロッテ®️ 株式会社ロッテホールディングスの登録商標です
トッポ®️ 株式会社ロッテの登録商標です
やっぱこれだね~♪®️ 株式会社ロッテの登録商標です
最も重要なのは「誰か?」の部分
商標権の侵害になるかどうかは、「ロッテだと思って買ったのに違うじゃないか!」という、出所の混同・事業者違いが起きたかどうかで決まります。そのため、ブランディングで最も重要なのは、このブランドは「誰の」ブランドかという、「誰か?」の部分です。
単に、トッポという名前だけが有名であっても、それが「ロッテ」の商品だという部分が無名なのであれば、極端な話、商標権の侵害にもなりませんし、あらゆる責任追及が困難になります。それだけ、「誰か?」の部分は重要なのです。例えば、株式会社ロッテにはトッポの他にもコアラのマーチがありますが、そのCMを思い出して口ずさんでみてください。ブルボンにはチーズチョコぱんというお菓子がありましたが、そのCMも思い出して口ずさんでみてください。永谷園には麻婆春雨の元が売られていますが、そのCMも思い出して口ずさんでみてください。つまり、そういうことです。なお、テレビCMとしては1990年代が最も基本に忠実で好ましい例が多くあります。
ロッテ コアラのマーチ TVCM「マーチくんの夢」篇(24年改訂) 15秒
【公式】ブルボン 濃厚チョコブラウニー「チョ・チョ・チョ」篇 15秒
麻婆春雨「どんな味?篇」6秒
品質はあまり重視されない
ところで、トッポというお菓子が「筒状の焼き菓子の内部にチョコレートを充填した構造」であるという部分は、実はブランディングにおいてはあまり重要ではありません。極端な話、筒状の焼き菓子の内部にチョコレートを充填したお菓子自体は、その構造を特許権で守ることはできるとはいえ、似たようなお菓子は誰でも作ることができるため、「唯一無二の私のブランドが害された!」という主張はほとんど通らないのです。それでお客さんが流れたとしても、純粋に「あなたの商品よりも魅力的な競業製品が登場したのですね!」で片付けられてしまうのが現実です。とにかく、会社名・人名との強固な結びつきが、ブランディングの基本であることに注意してください。